大判例

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東京高等裁判所 昭和30年(う)1273号 判決

被告人 桜井和一

〔抄 録〕

弁護人の控訴趣意第一点について。

原判決の挙示引用に係る標目の各証拠を綜合すれば原判示第一、二の各事実は優にこれを認めるに足り事実誤認の疑はなく当審における事実取調の結果によつても右の認定を左右するに足りない。また論旨は原判示第二の事実は氏名不詳者との共犯関係として起訴されているのに拘わらず、原審はこの点につきなんら触れるところなく被告人の単独犯行と認定処断しているのであるが、かくの如きは起訴事実と異るか、然らずとするも審理不尽のそしりを免れないと主張するから、この点につき按ずるになるほど原審が窃盗の共同正犯として起訴された被告人の原判示第二の所為を訴因変更の手続を経ることなく被告人の単独の所為と認定していることは所論の如くであるが、刑事訴訟法が訴因及びその変更手続を定めた趣旨は審理の対象範囲を明確にして被告人の防禦に不利益を与えないためであると認められるから、裁判所は審理の経過に鑑み被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞れがないものと認めるときは公訴事実の同一性を害しない限度において、訴因変更の手続をしないで訴因と異る事実を認定してもさしつかえないものと解するのを相当とする。本件において被告人は当初から窃盗共同正犯の訴因を全面的に否認し無罪を主張してあらゆる角度からの反証を挙げて争つておるのであつて、原審認定の窃盗の単独犯に対する防禦方法としても欠けるところはなく、従つて原審が特に訴因変更手続をしなかつたからとてこれがため被告人の防禦に実質的な不利益を生じたと認むべき点はなくまた原審の認定事実は公訴事実の範囲内に属すること明らかであるから原判決には所論の如き違法の点は毫も存しない。それゆえ論旨は理由がない。

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